Leonard Foujita展
今日は、現在上野の森美術館で開催中の「没後40年レオナール・フジタ展」のご紹介です。
私は今までずっと藤田嗣治は好きだけど、レオナール・フジタはあんまり....と思っていたのですけれど、今日の展覧会を見て気持ちが変わりました。フランス国籍を得て受洗をし、レオナールと改名してからの時期に重点を置いたこの展覧会は、エソンヌでの晩年の生活やシャペル・フジタの様子が再現されていて興味深いものでした。
今まで私は展覧会へ行くと、「この絵のこの線が好き」とか、「この表情が好き」というふうに、1枚1枚の絵を見ていた様に思うのです。でも、今日は見終わった後に「私は、藤田嗣治の人生全部が好き!」と思いました。
まず私の目を惹いたのは、展覧会場へ入ってすぐ右手にかかっている、モディリアーニが描いたフジタの肖像でした。数少ない線であんなに見事にフジタらしさを捕まえている事がとっても印象的だったし、フジタを有名にした乳白色の裸婦達は、いつも通りとってもとってもきれいでした。フジタが自分好みに毛を抜いて、細くした面相筆で描いた身体の線や、印象的な目を見ると、いつも私は思わず溜息が出ます。本当にきれい。。。
「仰臥裸婦」と、その下絵として描かれたデッサン「腕をのばした大きな裸婦」が並べてかかっているのですけれど、何となく印象が違う感じ。油彩とデッサンということだけではなくて、何だか感じる雰囲気が違うんです。デッサンのほうがかわいい、ふんわりした感じがします。じっと見てみたら、顔が少ーしだけ違いました。デッサンのほうがほほがふっくらしていて、右目の睫毛の向きが逆で、髪ももっとくしゃくしゃっとした感じでした。暫くこの絵の前にいたら、何だかその時のアトリエの雰囲気が伝わってきて、私までモデルを前にしている気分になりました。
そして、3番目の奥さんになったモデルのユキは、本当はベルギー人なのに何故ユキって呼ばれてるの???と私はいつも不思議に思っていたのですけれど、今日その謎が解けました。彼女の肌が「雪の様に白い」ので、フジタが「ユキ」と呼んでいたそうです。ふぅん...。ユキとユキの親友を描いた「二人の友達」を見ると、ユキの肌の白さが際立っている事が感じられます。フジタは、「女に耳としっぽをつけたら猫でしょう。」と言っていたそうですけれど、このふたりは本当に猫みたい。
私が一番等身大のフジタを感じられて楽しかったのは、彼がが晩年を過ごしたエソンヌのラ・メゾン=アトリエ・フジタの様子が再現されている展示でした。フジタが作った、まるでドールハウスのようなアトリエの模型は、彼が長ーい時間をかけて楽しんで作ったのが感じられて面白かったし、そのほかにもフジタがミシンを使っている写真や(彼は自分や妻の洋服を縫うのが大好き!)、妻へ贈った手作りの箱、愛用していたお裁縫道具が入っていた缶(色々な色の糸やボタンでいっぱい!)、木彫りの鏡(もちろん、私も自分を映してみました。フジタと同じ鏡に映っている自分が不思議な感じ!)など、興味津々でした。かわいいアルミの装飾用のレリーフは、私も幼い頃から大好きで、自分でアルミ板を買ってきて、釘で模様をつけてから、はさみで切り抜いて、クリスマスオーナメントにしたりしていました。
会場に展示されているこまごまとしたものや、それらが使われていた家の写真を見ていると、フジタが自分がきれいだと思うもの、好きなもの、いいと思うものを使いながら暮らしたい、と強く思っていた事が解ります。それ以外はいらない、という感じです。一番凝縮されたフジタの世界がありました。
さて、これは何でしょう?
これは、フジタが妻に贈った手作りの箱です。
そして、フタを開けると?
こんな素敵なフジタが描いた擬人化された猫の小皿が入っています。
自転車に乗ったり、パラソルを差したり、ダンスをしたり....。フジタが実際に描いたお皿は、もっと大きくてお皿の縁もグルッと紺色です。(これは、今回の展覧会の為に作られたミュージアムグッズです)
何年か前の京都での展覧会や横浜での回顧展などを見た時には、その線の繊細さや美しさに一番強く心を打たれた印象がありました。でも、今回はフジタが生涯追い求めた「西洋と東洋の融合」という普遍のテーマを色々な角度から見られたので、フジタ像を感じる事が出来ました。
そしてこれは...
私が父から譲り受けたフジタです。私がいつも仕事をする机のすぐ側の壁から、いつも見守ってくれています。この絵を見る度に、きれいなことはすてきなこと、でも、一日でこの色、この線は描けないんだから、がんばろうっ、と思います。
没後40年 レオナール・フジタ展 上野の森美術館 ~2009. 1/18、福岡市美術館 2009. 2/22-4/19、せんだいメディアテーク 2009.4/26-6/7
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