« 私の大切なもの。 | トップページ | St. Valentine's Day »

My Shanghai 16

素敵な旗袍!

1920-30年代にかけて極東最大の国際都市だった上海は、海派と呼ばれる独特の上海流の文化を生み出しました。そして、それは生活の中にもいろいろな面で現れ、女性にとって一番身近なのは衣食住でした。
今日は、手芸家の私にとって興味津々の海派の「衣」の世界へご案内しましょう。

旗袍(チーパオ)というのは、中国語でチャイナドレスのことです。
上海で私が目にしたのは、街の中に並ぶ沢山のチャイナドレスのお店でした。長楽路と茂名南路の辺りのお店のウィンドゥには、普段着に着られそうな現代的なものから、思わず溜息が出るような伝統的な刺繍を施したものまでが並んでいます。

Cdress7
これは、長楽路のお店。こんな感じのドレスならば、東京でもちょっとしたお集りの時に着て出かけられそうです。


でも、現代風にアレンジされていない「本物の旗袍」を体験してみたかった私は、まずお店で出来上がった物を購入してみました。

Cdress1
Detail1


これは、足首辺り迄のロングドレスです。
私は、この深い群青色のような、少し青紫っぽいエレガントな色が気に入りました。これは、中国の色なのでしょうね。
菊の刺繍がきれいでしょう?もちろん一針ずつ丹誠を込めた手刺繍です。

私は、チャイナドレスのあの身体にフィットする感じが何となく恥ずかしくて少し抵抗があったのですけれど、実際に身につけてみると、その全ては着ている人を美しく見せるための工夫だということが解りました。
襟が高いのは首が細く長く見える様に、ウェストをピッタリに作るのは女性の柔らかな腰の線がひき立つ様に、深いスリットは歩きやすい様に、裾が細くなっているのは足が長く細く見える様に、という事を。


それに、何よりも自分の立ち居振る舞いが気になる様になるので、すっと背中を伸ばしたり、手を置く位置を考える様になります。旗袍を着ると自然と女らしい所作になるということなのかもしれませんね。


そして、チャイナドレスは何と言ってもディテールが素敵です。

Detail5
Detail4
Detail6

これは、上海に住む女性が結婚式のドレスを作るのならばここ!と憧れるお店、瀚藝(ハンイー)で作ってもらったチャイナドレスの襟元と裾です。

この襟や袖ぐり、裾の細い細いパイピング、生地に合わせて作ってあるチャイナノットや細かいステッチを見ると、思わずほぉっと溜息が出ます。
黒い方は、胸元のオーガンディの切り替えが大人っぽくて素敵でしょう?

このお店には80歳を越えるおじいちゃま職人がいます。彼は、日本との戦争の時代を経ているので日本語も少し話せます。覚えたくて覚えた日本語ではないはずなのに、チャイナドレスを作ってもらいたい、と訪れた私を快く受け入れてくれました。それは、きっと旗袍が外国人にも伝えたい大切な文化だからのでしょうね。

中国語が殆ど出来ない私が身振り手振りで、「襟はこんな感じで、こんな丈で。」と説明すると、「わかった、わかった。」と、にこにこしながら、少しでも私が綺麗に見えるように工夫をした素敵なドレスを仕立ててくれました。

ベテラン職人の彼にすっかり身を委ねて作ってもらったこの2枚のチャイナドレスを通して、私は上海の文化「海派」を体験する事ができたような気がします。

オーダーメイドをするならば、旅行の1日目に採寸をしてもらえば、仮縫いのプロセスを省略して4日目くらいには出来上がると思います。
でも、無理に急ぐよりは、きちんと仮縫いをして、(直すところって必ずあるもの!)日本へ送ってもらうのがお薦めです。そうすれば、時間のかかる刺繍をしてもらうことも出来るし、チャイナドレスとお揃いのショールを一緒に作ってもらう事もできるんですもの。

もしも、お店にあるサンプルのサイズが合えばラッキー!「これで大丈夫。」と言っても、「ちょっと着てご覧。」と更衣室へ押し込まれ、鏡の前で「ふむふむ、やっぱり。」とメモをしたりピンを打ったりが始まります。でも、この場合は「お直し」だけなので、翌々日くらいには出来上がります。

チャイナドレス以外にも、普段に着られるシンプルなスカートやパンツをオーダーすることも出来ます。日本から作りたいものの写真や型紙を持って行って、何冊もの分厚いチャイナシルクの見本帳の中から、自分の好きな生地を選ぶのも上海ならではの楽しみだと思います。

その時に、私が持って行ったのはこのDVD。
Detail7
これは2作とも香港の映画監督ウォン・カーウァイのものです。
マギー・チャンが着こなしている旗袍は洗練されていて、本当に素敵!!!

そのほかにも、海派の小説家 張 愛玲(アイリーン・チャン)の小説を映画化した「戒色」(ラスト・コーション)など、上海を舞台にした映画の中にはうっとりとするようなチャイナドレスが沢山登場します。

映画や小説からイメージを膨らませて、ぜひ上海へいらして下さいね。
そうしたら、街で見かけるチャイナドレスの見方が変わるかもしれません。ただの衣類ではなく、その後ろにある海流の文化や職人が作り上げて来た工夫がきっと見えて来るはずです。

瀚藝(ハンイー)長楽路1488号
旗袍(チャイナドレス)のオーダーメイドは1,500RMB位から

|

« 私の大切なもの。 | トップページ | St. Valentine's Day »

My Shanghai」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 私の大切なもの。 | トップページ | St. Valentine's Day »