My Shanghai 45
夏からずっと楽しみにしていた坂東玉三郎主演の昆劇「牡丹亭」を上海兰心大劇院に観に行ってきました。
きれいでしょう?
長楽路と茂名南路の角に建つ昆劇の名優 梅兰芳ゆかりの劇場の壁にはこんな大きな看板があります。
玉三郎さんが扮する杜麗娘があまり綺麗なので、急ぎ足で歩いていた人たちも思わず立ち止まって暫く眺めていました。
11/17~22まで6日間続けて昆劇を上演することは上海でもとても珍しく、それだけでどれほど中国側が力を入れているかということ、そして地元の中国人に玉三郎版「牡丹亭」を見せたいかが想像できます。
私が行った21日と22日は日本からのファンの方々がきれいにお着物を召していらしていて、中国の方たちの目を引いていました。でも、観客のほとんどは地元の中国の方で、プログラムを見ながら色々お話をしていて、その途中に時々「リーベン(日本)」という言葉が聞こえてきました。
明代の著名な劇作家 湯 顕祖(1550-1616) の代表作の「牡丹亭」は中国では知らない人はいないくらい有名なお話だし、この杜麗娘を演じたら右に出る人はいないと言われ続けて来た名女形、梅兰芳の再来と評判の玉三郎さんをいよいよ見られるという期待感に劇場がわくわくしているのを感じました。
劇場のロビーには玉三郎さんが「牡丹亭」を習い、そして一緒に公演をした蘇州の劇団や熱烈な歓迎を受けた南京大学などからのお花が溢れていて、いつもはただの「花」としてしか見えないお花が本当に「おめでとう!」と心からのお祝いの気持ちを込めたものに見えました。
私は東京で映画版も見て予習をしてきたし、2日間続けて見たので、千秋楽の22日は両サイドに出る字幕も見ずに、ひたすら舞台に集中することができました。
一幕ごとに変わる衣装は本当にきれい! 刺繍の本場蘇州で生まれた昆曲らしく、全てに素晴らしい刺繍が施されていました。色も、日本の色とは違う色。きっと、私が東京に戻ってあの色を再現したいと思っても、私が自分の色を持っているように、きっと私には表現できない「中国の色」なのだと思いました。
玉三郎さんが中国の記者のインタビューに答えて、こんなことを仰っていました。
「昆曲の神髄は2つあります。1つは幻想的な雰囲気。そして、もうひとつは美しい音楽です。
昆曲は東洋人が夢見た世界を描いており、私はこの点に特に引かれます。」(写真は千灯の昆曲博物館で撮ったもの)
そして、今回の舞台では元の演出にはなかった玉三郎さんが発案したシーンがあり、そこは私が最も強く引き込まれたところでした。杜麗娘が自分の死が近いことを感じて、母親に改まってお礼を言う部分なのですけれど、今、そのシーンを思い出すだけで胸がギュゥっとなって涙が浮かぶほど、心を強くつかまれる感じになります。
そして、中国側のプロデューサーも「これからの牡丹亭には必ずこのシーンが加わるだろう。」と言ったそうなので、きっと中国でも「坂東玉三郎版 牡丹亭」として残るのでしょうね。素敵!
3時間に及ぶ公演が終わって幕が閉じてもずっと拍手が鳴り止まず、カーテンコールの時には観客が総立ちになって惜しみない拍手と歓声を送っていました。私はその時、その場所にいられたことが本当に嬉しく、私も自分が出来ることを一生懸命にやろうと改めて強く思いました。
更に嬉しいことに、この舞台は来年は上海の万博で、そして6月には東京のTBS劇場で、そのあとは中国の深圳、香港での上演が予定されています。さぁ、来年のカレンダーとにらめっこの始まりです。
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コメント
10年ほど前に広尾のお宅で編み物を教えていただいてました。 あの時編んだセーター達、今でも時々着ています。 今日初めて先生のブログを知りました。先生がお元気でますます活躍されていて、本当に嬉しいです。
仕事で疲れて全くやめてしまっていた編み物をまた始めたくなりました…
投稿: 北出です | 2009年11月28日 (土) 07:23
わぁ、お元気でいらっしゃいましたか?
コメントして下さって嬉しかったです。
シェットランドの糸は傷みにくいから、私もずうぅっと着ています。
寒くなって来たから、ぜひちょこちょこ編物なさってみて下さいね。きっと、編物の楽しさを思い出してうれしくなると思います。
投稿: ginger | 2009年11月28日 (土) 16:47